これまでずっと病気などしなかった雷電が、はじめて倒れたのが去年の11月。ひどいケイレンを起こしました。

その症状は非常に重く、お医者さんに最悪、安楽死も選択肢にあると言われました。

ところが、雷電は奇跡的に回復しました。
後ろ足に少し障害は残りましたが、ゆっくりゆっくり歩けるようになり、家族も雷電を静かに見守りながら可愛がりました。

庭も雷電がくさりにつながれずに過ごせるように変えました。
ほえたり、走り回ったりはしなくなった雷電王は庭を自由に歩いて毎日をのんびり過ごしました。

いつまた倒れてもおかしくない状況でしたが、なんとか夏も過ぎ、こんなに暑い夏を乗り切ったのだから、長生きしてくれると思っていました。

玄関先で私が庭に咲いたムラサキ色の花を見ていると後ろから雷電がやってきました。
「お花、きれいに咲いてるねぇ」
私が雷電に言うと、雷電は私に「遊んでくれ！」という感じで２、３回その場を跳ねました。

とても天気のよい日でした。

しかしその翌日の9月9日の早朝、雷電はまたケイレンを起こして倒れました。

３日入院して、容態が安定したので退院。

右半身がマヒしてしまい、立ち上がることができなくなり、寝たきりになってしまった雷電王。
安楽死なんか考えずに、私と母は、介護してあげようと決めました。

ケイレンもおさまり、体を少し起こせるようになっていたので、もう大丈夫かなと思っていたのですが、15日の夜に何度も夜鳴きをし、16日は朝から昏睡状態。そして、その日の夕方に静かに息をひきとりました。

その時の空は今まで見たこともないくらい真っ赤に染まっていました。

台風といろんな条件が重なってできるめずらしい自然現象だったそうです。その空に向かって雷電王は旅立って行ったのでしょうか。

本当にあっという間の15年間でした。

いまだに家に帰るときは雷電王が出迎えてくれるような感覚がぬけません。
そして、まだ庭にある雷電が遊んでいたボールや散歩ヒモを見てはぼーっとした時間を過ごしてしまいます。

最初に倒れてから10ヶ月。
いつ倒れてもおかしくなかったので覚悟はしていました。

今まで以上に体をなでてあげたり、雷電が喜ぶことをしてあげたり、くいが残らないように愛情を注ぐことができました。

雷電は10ヶ月間頑張って、私たちにいつか来るお別れの日のために、心の準備をする時間を与えてくれたように思います。

ありがとう、雷電王。

天国では力いっぱい自由に駆け回れ。
いつかまたお姉ちゃんがボールを投げてあげるから。