チビのこと （２０００．１２．２１） チビのこと （２０００．１２．２１）
少し気持ちが落ち着いたのでチビの事を書きたいと思います。
１１月の『お世話はつらいよ！』に、ホームセンターで、ひどい状態で売られている子ガメ達の事について書きました。
寒い季節に、ヒーターも入れてない水槽で売られている衰弱した子ガメ達。
私は、あの後、一週間後にまたホームセンターを訪れました。山村さん用のグッズを買う為です。
そこで、見なければ良いのに、カメ水槽をのぞきに行ってしまいました。
そこには、たった一匹小さな子がまだヒーターもない水槽で、固まったように目を閉じて、じっとしていました。
見るからに死にそうでした。
先週は５〜６匹いたのに・・・。
多分、みんな死んでしまって、この子が生き残った最後の一匹なんじゃないかと思いました。
私は、カメグッズのコーナーに行き、山村さん用のグッズを手にして店のレジへ行きました。
「カメをください。」
私は、多分死ぬであろう衰弱しきった子ガメを、こんな所で死なせるわけにはいかないと言う怒りにも似た気持ちで、家へ連れて帰る事にしたのです。
見るからに弱っている子を、店の人は金魚を入れるのと同じようにビニール袋に入れて私にくれました。
私は、カメがそんな風に売られているとは知らなかったので、大変ショックでした。
５９８円。それが、この子の命の値段でした。
「早く暖かい水に入ろうね。」
私は、ビックリしているのかビニール袋の中でちょっと暴れ始めた子ガメに言いました。
良い場所で死なせてあげたい。
そんなつもりで家に連れて帰った私ですが、欲が出たのか、どうしても生きて欲しくなったのです。
甲長は３．５ｃｍ。
ゴハンを食べてくれません。
目をつぶってじっとしているだけです。
フンも全然しません。
ずっと何も食べてないに違いありません。
岩の上にじっとしているだけなので、水を飲んで欲しいと思い、水に入れてあげました。
すると、子ガメはいとも簡単に水に浮いてしまいました。あまりにも軽すぎて・・・。
そして、自分で岩に這い上がる力もありませんでした。
見るのもつらい毎日が始まりました。
母も子ガメが助かるよう様子を見に来ていました。
この子を『チビ』と呼びはじめたのは母です。
山村さんは元気でした。
食欲もあり、気持ち良いくらいにゴハンを食べ、動き回ります。
そういう姿を見ているだけに、チビが何も食べず、動かない姿を見るのが大変辛いのでした。
病院へも行きました。
一生懸命探して、爬虫類を診てくれる所を見つけて連れて行きました。
その病院は私の家からかなり遠く、長旅が、チビの体に大丈夫だろうか・・・とても心配しました。
病院ではまず体重を計ります。
６g・・・｢軽すぎます。｣と獣医さんはおっしゃいました。
とにかくゴハンを食べないと回復しないとお話されました。
念のために、レントゲンを取ってくれたのですが、甲羅が柔くて、透き通るように体の中が撮れていました。
その日からまたつらい日が続きました。
口を開けないチビにゴハンを食べさせる・・・。
チビを手に持ち、口を開けるまで根気強く待つのです。
体が小さすぎて、口を開けたとしても、中に食べ物をうまく入れられません。
口を開けるのは一瞬で、とても神経を使います。
一口食べさせるのに、１時間くらいかかりました。
うまく口に入れても吐き出してしまったり・・
口に物を押し込むのをチビは凄く嫌がりました。
私は、チビに嫌われている・・・そういう思いが芽生えてきました。
チビが嫌がって暴れる時、腹甲が薄いので、体の中が動いているのが私の指に伝わるのです。
甲羅にも栄養がいってないんで薄いんだ・・・
ただ助かって欲しい・・その一心でした。
そんな毎日が３週間も続きました。
お世話と仕事でもうくたくたでした。
しかし、チビの様子は段々悪くなっていました。
私はまた病院へ連れて行きました。
もう私の精神状態の方が危うい感じでした。
また、体重を計りました。
ゴハンを食べさせているから少しは増えただろう・・そう思ってました。
５ｇ・・・私は愕然としました。
チビの体重はまた減っていたのです。
ゴハンを食べさせていたはずなのに、全然身になっていなかったのです。
そして、いよいよ危ない状態だという事を獣医さんに告げられました。
宣告を受けたけれども、私は獣医さんと話すだけで心がとても癒されました。
最後までお世話をしなければ・・
病院に行った次の日、チビは、何度も口を大きくあけて｢ぎゃぁ・・・｣と言っていました。
そして、昼頃。山村さんが部屋で暴れたような形跡があり、変だなと思ってチビを見ると・・・
チビは亡くなっていました。
やせ細った姿は、とても痛々しかった・・・。
私は泣きました。
この３週間泣いてばかりだったのに、その上また泣きました。
でも、チビはやっと楽になったんだと思います。
そう思わないと悲しすぎてたまりません。
目を開けたのは１日くらいしかありませんでした。
目を開けて水の中を上手に泳いでました。
そして、私の方へ泳いで来ました。
その姿はとても可愛かったです。
私は、元気になるかもしれないと思ってました。
母には、チビが亡くなった事を言えませんでした。
話すと母は泣くでしょう。
私もまた母の前で泣くでしょう・・
｢また戻っておいで・・｣
私はチビにそう言って、お別れをしました。
ただ、かわいそうだから家へ連れて帰ったのはいけないですか？
子ガメを育てたこともないのに、甘かったですか？
チビは、あの水槽に入れられていた子ガメ達は、何のために生れたんですか？
私はもう抜け殻のようでした。
気が付くといつも涙をながしていました。
チビが死んだ次の日の事です。
まだチビが死んだ事を知らない母がチョコエッグを買ってきました。
私は、開ける気がせずに放っておきました。
一日たって、やっと開ける気になりました。
すると、中からミドリガメが出てきたのです。
私はビックリしました。
手のひらに載せると、チビとまったく同じ大きさでした。
不思議でした。
チビが戻ってきてくれた・・そんな気がしました。
私は、少し元気が出ました。
そしてもうひとつ不思議な事がありました。
私は半年以上も前に首を痛め、ずっと痛みを抱えていました。
痛くて眠れない程でした。しかし、チビが亡くなったときから痛みが消えたのです。
本当に不思議です。
私はチビに「お姉ちゃんは、首が痛いよー。」と言っていました。
都合の良い考えかもしれませんが、チビは自分の痛みや苦しみと一緒にそれも持っていってくれたんじゃないでしょうか。
今回の事が私に何を教えてくれたのか、まだよくわかりません。
思い出すとまだ涙が出るのです。
悲しい気持ちばかりが先にたって、冷静に考えられません。
まず、チビの世話をしている間、あまりかまってあげられなかった山村さんを可愛がってあげようと思います。
それから、カメについていろいろと考えようと思います。
（おわり）
2002.9.18リンク追加 −動物の管理も法律で定められています。−
動物の保護及び管理に関する法律 / 動物の法律・条例集